五月の声を聞くと、毎年、京都・二条から五条の鴨川べりにずらりと並ぶ木組みのやぐら―それが、鴨川納涼床。現在、皐月床・本床・あと涼みと五ヵ月にわたります。京の風土に根づいたそのたたずまいは、夕暮れどき、提灯やぼんぼりに灯がともされるとまた格別の風情があります。
床は、蒸し暑い京都で、店に奥行きと開放感を持たせるために生まれた空間のデザイン。
昔から鴨川納涼床を出していらっしゃるお店の方によれば、床を出すのは季節に応じて建具を変える・しつらえを変えるのと同じとのこと。とはいえ、おもてなしの心なしには、この贅沢感は味わえません。
京都で床は、風流を解する人々のサロン的な存在としても親しまれてきました。かの魯山人も床を楽しんでいる様子が写真に残っているとか。おぼえておきたいのは、いかに解放的とはいえ街中だということ。楽しみの中にも節度をわきまえたいものです。堅苦しくはないけれど、くだけた席でもない。その微妙なところに大人の粋(すい)な遊びごころがある、と地元の先達はおっしゃいます。
入門編として、まずはスターバックスをご利用いただくもよし、「たとえば、ご飯を食べる、お酒を飲む、そうした床づくしの一日の仕上げにスターバックスでお茶を飲む。そういったふうに楽しまれるのもいいですなあ」老舗のご主人のそんなひとことにも、センスある床遊びのひとつのヒントがありそうです。
協力:京都鴨川納涼床協同組合 久保明彦氏 北村保尚氏